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日本を代表する14人の博士が選んだ有望技術

■調査方法

日本を代表する14人の博士たちが有望視した各技術分野ごとに関連企業をリストアップした。 次に、知財の専門家や市場関係者、日本経済新聞・科学技術部記者らに依頼し『日経ヴェリタス企業評価チーム』を結成、各メンバーが得意分野を選択しリスト掲載企業の将来性について評価した。 14人の博士は評価チームには参加しておらず、各博士のコメントなどは個別企業を推奨するものではない。

評価チームのメンバーには、各分野ごとに評価する企業を1位から5位まで挙げてもらい、1位5点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点として集計。 記事中の表では各分野で総得点が多い順に5社を示した。

■日本を代表する14人の博士

バイオ・医療
井村 裕夫(先端医療振興財団理事長)
iPS細胞とナノテクノロジーなど複数分野の技術の融合に着目。 医療材料では東レや帝人など強い企業も
黒田 玲子(東京大学教授)
幹細胞技術や遺伝子技術。 例えば、肝臓の働きをする細胞を培養すれば再生医療に役立つ。 負の面の配慮も必要 
軽部 征夫(東京工科大学学長)
テーラーメード医療。 個人に最適な治療を提供し医療費も減らす。 植物や土壌の改良で成長を促す農業
素材・製造装置
生駒 俊明(JST・研究開発戦略センター長)
資源の枯渇から素材開発が重要視される。 部品や工作機械は改良により日本が強みを保てる
橋本 和仁(東京大学教授)
レアメタルの高騰で、無尽蔵に存在する炭素(カーボン)の活用がカギ。 三菱化学などが有機素材に注力
平尾 一之(京都大学教授)
ナノレベルの加工費が下がれば、容積が5倍に増えるDVDが実現。 ガラス自体が太陽電池となる可能性も
電気・情報・通信
江崎 浩(東京大学教授)
次世代ネットワーク。 省エネにしても、センサーから情報を通信網に乗せ総合処理する技術が不可欠に
牧本 次生(元日立製作所専務)
日本の得意とするデジタルコンシュマー製品の基盤となる半導体技術。 半導体はGDPの4割に影響及ぶ
坂村 健(東京大学教授)
あらゆるものにICタグが埋め込まれたどこにでもコンピューターがある技術。 大日本印刷や凸版印刷に注目
ロボット
高西 淳夫(早稲田大学教授)
ヒューマンロボット。 トヨタ自動車の本格参入で人と共生するロボットのすそ野が拡大。 医療分野も有望。
石黒 浩(大阪大学教授)
伸縮する皮膚センサーや関節のアクチュエーターなどの要素技術。 人型ロボットはコミュニケーションに有用
広瀬 通孝(東京大学教授)
少子高齢化が進むなかで介護や家事など労働力の代替となるロボット技術。 法整備も重要に
環境・エネルギー
西岡 秀三(国立環境研究所特別客員研究員)
自然エネルギーを生かす住宅。 高効率機器を求め事務所だけでなく家庭にもリースが広がる。 低炭素社会は来る
西沢 潤一(首都大学東京学長)
バイオマスなど廃棄物をうまく活用する技術。 水力発電の拡大に不可欠な直流送電技術も重要、関電が研究

■バイオ・医療

再生・遺伝子治療 コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
武田薬品工業 4502 17 12.6% 22.9
キリンホールディングス 2503 16 ▲15.9% 12.5
タカラバイオ 4974 13 ▲6.0% 266.2
アンジェスMG 4563 ▲38.2%
トランスジェニック 2342 13.7%

京都大学の山中伸弥教授らが、ヒト細胞から人体のあらゆる細胞や組織に成長する能力を持つ新型万能細胞(iPS細胞)の作製に成功するなど、再生医療の実現性が高まってきた。 先端医療振興財団理事長を務める井村裕夫博士や、東大教授の黒田玲子博士も、幹細胞やiPS細胞、遺伝子医療を将来の有望技術に挙げた。

iPS細胞の活用を視野に、再生医療研究に取り組む企業の代表はタカラバイオ。4月にiPS研究の新部門を設立した。 同社は『専門の遺伝子治療技術などを、iPS細胞の研究に役立てたい』(バイオインダストリー部)という。 日経ヴェリタス企業評価チームの採点で3位に入った。

同社が特許を持つ治療用遺伝子を効率よく体内の細胞に運ぶ技術にも期待が高まる。 例えばがん治療。 企業評価チームからも『がん患者自信の細胞を活性化させ、体内のがん細胞を壊すタカラバイオの治療法に着目している』(工藤淳也・大和証券投資情報部課長代理)との声があがった。 実現すれば、化学療法に伴う副作用などから患者が解放される。

国内医薬品トップの武田薬品工業も、遺伝子組み換え技術を利用した医薬品開発を手掛ける米企業を買収したことなどが評価を高めた。 同社は研究開発投資に耐えうる強固な財務基盤も評価され、企業評価チームの採点で首位となった。

武田は核酸医薬にも取り組んでいる。 核酸医薬とは病気の原因となる物質の遺伝子に直接作用する薬で、免疫機構を活用する抗体医薬の次の分野として注目を集める。 4月以降、同社の株価は12.6%上昇と日経平均の上昇率(1.8%)を大幅に上回っている。

企業評価チームの採点で2位に入ったキリンホールディングスは、傘下の協和発酵が『抗体医薬分野で世界の先端を走っている』と評価された。 協和発酵は『薬効成分を患部に効率よく届ける技術など核酸医薬に不可欠な技術も持っている』(工藤氏)という。 持ち株会社のキリンHDの株価は、消費低迷によるビール関連株の売り基調に押され気味だが、医薬分野に着目すれば押し目買いの好機かもしれない。

大阪大学などと肝細胞増殖因子(HGF)の遺伝子を使った血管新生の治療応用を進めているアンジェスMGに関しては、『遺伝子薬を厚生労働省に製造・販売申請中で来年にも許可される見通し。 これが軌道に乗れば、血管の再生治療分野での伸びが見込める』との指摘もあった。 遺伝子解析のトランスジェニックは、特定の遺伝子の働きを止めたノックアウトマウスの作製などが事業の柱だ。

■素材・製造装置

有機EL コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
出光興産 5019 26 25.3% 12.4
住友化学 4005 11 4.5% 20.0
アルバック 6728 ▲7.0% 21.5
コニカミノルタHD 4902 12.2% 11.5
三菱ケミカルHD 4188 ▲7.7% 13.0

カーボン コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
東レ 3402 19 ▲24.0% 22.9
東洋炭素 5310 12 ▲26.0% 29.2
東海カーボン 5301 11.3% 19.8
帝人 3401 ▲18.6% 28.0
三菱レイヨン 3404 ▲6.0% 120.0

米アップルがiPodで、ネット音楽流通というビジネスモデルを作り上げたような構成力は、日本企業には乏しい。 だが、『独立で成り立つ分野の技術では、世界的競争力を持つ企業が多い』(東大教授の坂村健博士)。 素材や製造装置、部品が代表例で、東大教授の橋本和仁博士は『素材分野で期待される技術の1つは有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)』という。 

ソニーなどの有機ELテレビを支えるのが、素材や製造装置のメーカーだ。 日経ヴェリタス企業評価チームの採点では、有機EL用発光材料を手掛ける出光興産が高い評価を得た。 同社は石油元売り大手だが、有機ELの発光材も供給している。 有機ELテレビへの関心が高まるのと歩調を合わせ株価は4月以降25.3%も上昇した。

発光材とパネル生産を手掛ける住友化学も、有機EL装置の技術を持つ米ケンブリッジ・ディスプレー・テクノロジーを買収した効果が期待される。 アルバックは『有機EL市場が拡大してくれば、同社が手掛ける研究開発用装置も拡大する』(鎌田重俊・立花証券企業調査部次長)との指摘が出た。

コニカミノルタホールディングスは『有機EL関連の特許出願件数が多く、一般的な材料より消費電力が低いりん光発光材料に強みを持つ』(知財コンサル、アイ・ピー・ビーの日比幹晴氏)点に関心が集まる。

科学技術振興機構(JST)・研究開発戦略センター長の生駒俊明博士は『資源高で身の回りに豊富に存在する元素を使った代替材料の開発が急務』と指摘する。 豊富な有機物の代表は炭素。 企業評価チームが“炭素銘柄”の筆頭に挙げたのは東レだ。 航空機などで採用が進む炭素繊維樹脂で世界シェア首位だが、最近は自動車用の研究開発を進めている。自動車向けはコスト面で課題が残るが、車体が鉄から炭素繊維に変われば革命的な転換だ。

帝人も子会社の東邦テナックスを通じて炭素繊維事業を手掛ける。 複合材料を開発するベンチャー企業を買収したほか、静岡に炭素繊維材料の開発拠点も設置した。

炭素の用途はほかにもある。 整った結晶構造を持ち、軽くて丈夫な材料として注目度が増しているのが等方性黒鉛だ。 等方性黒鉛は熱や電気をよく通し、耐熱性も高く薬品にも強いため、原子炉の炉心などにも使われている。 東洋炭素は等方性黒鉛のトップメーカーで、同社の近藤純子社長は『21世紀は間違いなくカーボン(炭素)の時代になる』と自信満々だ。

■ロボット

本体 コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
安川電機 6506 18 ▲12.2% 9.9
ファナック 6954 11 ▲12.1% 16.6
トヨタ自動車 7203 ▲3.6% 13.2
ホンダ 7267 24.1% 13.2
三菱重工業 7011 23.0% 32.7

 

部品 コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
ナブテスコ 6268 14 ▲14.9% 12.9
オムロン 6645 ▲1.0% 13.2
日本電産 6594 17.3% 17.9
ハーモニック・ドライブ
・システムズ
6324 ▲3.6% 10.7
THK 6481 6.1% 13.1

社会保障費を2兆1,200億円抑制し、352万人の労働力を補う効果がある。 機械産業記念事業財団は3月、2025年時点でロボットがもたらす社会経済効果をこう試算した。 財団の委託で調査をまとめた東京大学の広瀬通孝博士は『少子高齢化に伴う人手不足対策として海外からの労働力導入が議論されているが、生産現場ではロボットによる代替を検討する方が自然な流れだ』と指摘する。

日経ヴェリタス企業評価チームの採点で評価が高かったのは安川電機とファナック。 いずれも産業用ロボットメーカーで、安川電機は腕が2つある双腕ロボットや、多関節ロボットが得意分野だ。 関節に使うモーターなどの技術力も高い。 同社の推定では産業用ロボットでの世界シェアは台数ベースで世界首位。 アーク溶接ロボットでも国内シェアは約40%とトップだ。 現状では自動車産業向けが多いが、物流向けなど新たな顧客の開拓に向け新世代ロボットの開発も急いでいるという。

ファナックは工作機械の加工動作を自動化する数値制御(NC)装置で世界首位。 その強みを生かし、工作機械に設置する加工対象物の着脱を、人間の手作業からロボットに置き換える技術の普及を目指す。 視覚や力センサーを備えた知能ロボットによって、コスト低減はもちろん、より柔軟な生産システムを構築できる。

ロボットの用途は生産現場だけではない。 将来は家事や介護を手伝うパートナーロボットの需要が拡大しそうだ。 トヨタ自動車は『物作り、人の移動、介護・医療、家事の4分野で人と共生するロボットを2010年代に実用化する』というビジョンを掲げ、このパートナーロボット市場に照準を合わせる。 8月1日には体重を傾けるだけで操作可能な立ち乗り型移動支援ロボット『Winglet(ウィングレット)』を発表、近く中部国際空港や横浜市の商業施設で実証評価を始める。

ホンダは2足歩行型ロボット『ASIMO(アシモ)』の開発で知られる。 実用化に向けた改良を着々と進めており、企業評価チームからも『パートナーロボットとしての将来性に注目』(浅井一郎・大和証券投資情報部課長代理)という意見があがった。

ロボットには関節を動かす小型モーターや制御用減速機など多種多様な部品が必要。 こうした精密機械部品で高い技術力を持つ日本企業は多い。

ナブテスコはロボットの関節部分の精密減速機の大手。 内外の大手企業にも納入し高シェアを誇る。 工作機械や半導体製造装置向けなど用途領域も着実に拡大している。 ハーモニック・ドライブ・システムズは小型産業用ロボットに使用される波動歯車・減速機が主力で、産業用ロボットの関節部品では世界シェア5割だ。

オムロンはセンサー部品と制御技術に強みを持つ。 顔認識センサーなどロボットに応用できそうな技術を多数保有している点が評価された。 日本電産は子会社の日本電産サンキョーがガラス搬送用ロボットを手掛けており、液晶パネルメーカーの投資復調を受けて好調だ。 THKはロボットの往復運動の精度向上を支えるLMガイドの主力メーカーだ。

■環境・エネルギー

太陽電池 コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
シャープ 6753 30 ▲19.1% 14.5
アルバック 6728 10 ▲7.0% 21.5
三洋電機 6764 4.8% 38.9
昭和シェル石油 5002 16.9% 7.9
カネカ 4118 10.8% 13.4

バイオマス コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
三菱重工業 7011 11 23.0% 32.7
ホンダ 7267 10 24.1% 13.2
日揮 1963 32.7% 16.8
新日本石油 5001 7.2% 10.2
三菱商事 8058 ▲1.8% 8.6

国立環境研究所特別客員研究員の西岡秀三博士は『CO2排出量の削減期限が目前に迫り、エネルギーを使わないことがビジネスチャンスになる』と指摘する。 環境・エネルギー分野で日本が先行するのは太陽電池。 シャープは多結晶シリコンを原料にした太陽電池に加え、シリコン結晶を膜状にする薄膜系でもトップクラスで、日経ヴェリタス企業評価チームの採点で高い評価が出た。

同社はシリコン使用量を従来の100分の1に抑えた薄膜型太陽電池の量産を2009年度から堺工場(大阪・堺市)で本格化する。 多結晶シリコンの需給がタイトな現状では、薄膜系の競争力が増すと判断した。 11年度には関西電力と共同で、太陽電池を使った発電所の運用も始める。 日本では民間住宅などの発電用に限られていた太陽電池だが、今後は海外と同様に大規模発電所の建設が増えそうだ。 薄膜型はカネカも生産に乗り出している。

三洋電機は多結晶より発電効率が高い一方で、コストも割高な単結晶シリコンを使う『HIT太陽電池』が主力。 設置面積が少なくて済むため国内の住宅向けに強みを持つ。 昭和シェル石油はシリコンの代わりに銅やインジウムなど金属化合物を使う新世代太陽電池の量産を計画中だ。 同社の投資額は1,000億円超で、11年から生産を開始する予定。 シリコンを使うタイプより生産コストを抑えられるとみている。

アルバックは現在、半導体製造装置が主力事業だが、次の柱として太陽電池製造装置に注力している。 特に薄膜系太陽電池の製造装置に力を入れており、海外からの受注も拡大している。

国連によると、07年の世界の省エネルギー事業向け投資額は04年の7倍増。 景気減速が顕著になるなかでも、環境投資の伸びは続きそうで、西沢潤一・首都大学東京学長は『バイオマス燃料も注目技術の1つ』と指摘する。

バイオマス燃料分野では三菱重工業が、わらや木くずなど非食用植物からバイオエタノールを生産する実証設備を09年上期に立ち上げる。 従来主流だったトウモロコシなどのバイオエタノール原料は、食用との競合で価格が高止まりしている。 非食用植物を使うプラントは、世界的な食料需給を緩和するのにも役立ちそうだ。

ホンダも食用にならない稲わらや廃材から安価にバイオエタノールをつくる事業計画を明らかにしている。 日揮は稲わらや廃材を硫酸で処理する技術を研究しており、バイオマス燃料の実用化に取り組んでいる。

■電気・情報・通信

次世代ネット コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
NTT 9432 23 20.5% 16.3
NEC 6701 13 28.4% 28.3
日立製作所 6501 32.8% 66.0
ソフトバンク 9984 0.2% 16.3
富士通 6702 15.0% 15.5

次世代携帯・半導体 コード 総得点 株価騰落率
(3月末比)
  PER
(8/21時点)
東芝 6502 17 ▲2.4% 16.1
NTTドコモ 9437 14 9.1% 14.7
KDDI 9433 3.3% 11.2
富士通 6702 15.0% 15.5
東京エレクトロン 8035 0.2% 33.2

『ネット経由で株式売却ができない』『お金が振り込まれてこない』。 2011年某月某日、世界は大混乱に陥るー。 これはまったく根拠のない予言ではない。 現状のインターネットの仕組みでは『ネット上の住所に相当するIPアドレスは有限個数しか割り振れず、しかも、まだ使われずに残っているのは全体の15%しかない。 3年後にトラブルが起きてもおかしくない状況』と東大教授の江崎浩博士は指摘する。

しかし、問題を解決する技術的な糸口は見えている。 現在のIPv4(インターネットプロトコル・バージョン4)と呼ばれる通信手順に代わる、次世代ネットワーク技術IPv6だ。 IPv6を使えば天文学的なIPアドレスが創出できる。 NTTはこのIPv6を活用したネットサービスを、08年3月からNGNの名称で開始した。

NGNではハイビジョン画像の映像配信、地上デジタル放送のIPネット再送信なども可能になる。 日経ヴェリタス企業評価チームもNGNの将来性に期待し、次世代ネット分野でNTTに高得点をつけた。

NTTのNGNを支える通信機器メーカーの代表格がNEC。 NECは『アルカテル・ルーセントとの広範囲な協業など、NGNの海外展開も期待できる』(藤戸則弘・三菱UFJ証券投資情報部長)という。 NTT、NECなど旧電電ファミリーの株価は長らく低迷してきたが、NGNの行方次第では中長期的に上昇基調に転じることもあり得る。 実際、08年4月以降のNECの株価は28.4%の上昇と、日経平均を26.6ポイント上回る。

ソフトバンクも注目銘柄。 5月から社内で、超小型基地局『フェムトセル』の実証実験を始めた。 年内にも商用化する見通し。 携帯電話の基幹網のIP化も進めている。 『ソフトバンク版NGN』ともいえる取り組みで、通信コストの大幅削減が期待できる。 ソフトバンクグループに関しては、企業評価チームからも『日本のNGN市場における起爆剤となる』と期待の声が寄せられた。

成熟化が指摘される携帯電話や半導体でも、技術のブレークスルーは期待できそう。 東芝は携帯機器向けで業界最大容量のNAND型フラッシュメモリーの販売を開始した。 4~6月期はメモリー価格下落で営業赤字になったが、原子力発電など社会インフラ事業は堅調なため、中長期的に半導体の投資競争を勝ち抜けるとの見方もある。

次世代携帯電話サービスに関しては、NTTドコモが日本の規格である『LTE』の国際標準化を狙う。 LTEは光ファイバー並みのデータ通信ができるなど最先端の技術だが、国際標準は必ずしも技術の優劣だけで決まらない。 日本は過去に独自技術を世界に普及させられず孤立した苦い体験があるだけに、巻き返しのチャンスといえる。

■主な重要技術の普及予測時期

分野 内    容
2016 情報 悪質なハッカーの攻撃からプライバシーを保護する信頼の高いネットワーク
2017 情報 毎秒10ギガビットの光通信網が家庭で一般化
環境 廃車のゴミ問題をほぼ完全に解決する自動車のリサイクル技術
2018 情報 ほとんどの室内照明が発光ダイオード(LED)などの半導体光源に置き換わる
環境 10キロメートルメッシュ程度での降雨シミュレーション
2019 情報 少量多品種に対応でき、設備投資額を2ケタ減らせるミニ半導体工場
2020 災害 積雪や集中豪雨のメカニズムの解明
生命 そううつ病の原因を分子レベルで解明
エネルギー 変換効率が20%以上の大面積アモルファスシリコン太陽電池
生命 がんや難病の発病リスクを判断するバイオチップ診断システム
2021 情報 超小型の身につけられる機器を実現するマイクロメートル級の実装技術
エネルギー 燃料電池を搭載した交通機関
2022 環境 二酸化炭素ガスの国別吸排出量を人工衛星により高精度で観測する技術
2023 災害 地震発生数分前の予知を可能にする地殻変動センサー
2025 エネルギー メタンハイドレート採掘利用技術
2030 生命 がんの転移を防ぐ有効な技術
災害 M7以上の地震発生の場所と時期を高精度で予測
2032 エネルギー 高レベル放射性廃棄物の地層処分技術

                      (2005年技術予測調査より)

文部科学省が5年ごとに実施する『技術予測調査』は、第一線の研究者や技術者の知見を合わせ、今後30年間の技術発展の方向性を探る。 2005年発表分まで8回の調査を重ねている。 直近の発表では、情報分野でインターネットのセキュリティー対策や、機器の精密化を支えるナノテクなどの微細加工技術を重要テーマに挙げた。

エネルギーでは地球温暖化対策という目前の問題を解決するため、太陽電池や燃料電池が盛り込まれた。 これは環境分野にもまたがり、息の長いテーマとなりそうだ。 17年には自動車リサイクル技術も確立すると予測する。

生命分野ですぐに実現する課題は多くないが、病気の原因解明に向けたバイオ関連の技術開発は重要度が高い。 災害に関しては予知から人的被害の軽減まで幅広い課題があり、関連ビジネスが今後成長しそうだ。

もちろん、予測なので当たり外れはある。 1971年の最初の調査で挙げた616課題のうち、04年末時点で一部でも実現したのは69%。 『テレビ電話やテレックスの開発により、一般事務部門で在宅勤務を認める企業が出現する』という予測は、インターネットという当時の想定とは異なる手段で実現した。 76年調査で挙がった『任意の場所から送受信可能なポケットテレホンが実用化する』は、音声だけでなくデータ送受信も可能な『ケータイ』として、今や生活の一部となった。

一方、90年代には完成すると想定していた『連続制御が可能な熱核融合炉の実験炉』や『誤りのない大規模ソフトウエアの短期開発』は技術的な問題を超えられず実現していない。

中長期的な技術の方向性と実現性を的確に読めば、投資の観点からも大きなチャンスになるのは事実。 例えば、82年調査で挙がった『複写機などハードコピーのカラー化が普及』 『電子カメラが普及』。 今ではカラー複合機、デジタルカメラとして普及しており、これを主業とするキャノンの株価は82年初から12倍になった。 日経平均のその間の上昇率はわずか、1.6倍。 キャノンの株価は米ダウ工業株30種平均に匹敵する伸びを示した。
       (日経ヴェリタス 08年08月24日号 より)

個人的には、環境問題とロボットが今後大きな産業になっていくのではないかと思っています。 ただ26年前に比べてキャノンの株価が12倍になっていると、今言われてもね・・・・・。 それだけ新しい技術には、新しい会社が誕生する可能性もあるということです。

今のように資本に国境がなくなると、国際的な分業がもっと進むのではないかと思っています。 日本で資源や鉄鋼、船会社などを無理してやる必要はないように思うのですが・・・・。 それに金融やサービス業も日本人はあまり得意ではないように思います。 結局最後は得意分野が生き残っていくのではないでしょうか。 

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2008年金融・経済」カテゴリの記事

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